心臓の弱い方、お一人でご覧になる方は、この「恐怖劇場アンバランス」はご遠慮下さい…
 【恐怖劇場アンバランス】  恐怖劇場アンバランス
俺なりのストーリー説明(9〜13話)です。
わかりにくく、さらに見にくいかもしれませんが我慢してくださいませ。

09  10  11  12  13


          モ  ル  グ
【第9話:死体置場の殺人者】 1973年3月5日放送 制作第3話
●脚本:山浦弘靖 監督:長谷部安春


木乃伊の恋
 雨の降る夜道。城南医大助教授の水上(久富惟晴)は、教え子で愛人でもある小野寺涼子(西尾三枝子)を助手席にのせ車を走らせていた。運転中の水上にしがみついてくる涼子。あわてた水上はハンドルを切り損ね、通行中の村田信介(向精七)をはね殺してしまう。警察へ通報しようという涼子だが、自分の身の安全を考えた水上は死体を大学のモルグ(死体置場)へと運んでしまう。
 モルグに突如として鳴り響くオルゴールの音色。それは村田の、まだ幼い愛娘への誕生日プレゼントであった。水上は村田の遺体をホルマリンのプールへ沈め、荷物をすべて焼却するが、焼かれてもなおオルゴールは鳴り続けた。
 自宅へ戻るもベランダや子供部屋から人の気配を感じる水上。さらにあのオルゴールの音色が聞こえてきた。壊れたその音色は苦しんでいるようにも聞こえた。医学部長・剣持(渥美国泰)の娘でもある妻の弥生(中原早苗)から、近所から聞こえてくるのではと言われ、なんとか落ち着きを取り戻す水上。

 村田家。父親の帰りを待ち疲れて寝てしまう娘のマキ(斎藤リカ)と、心配する妻の千津(柳川慶子)。そこへ村田から、残業のため今夜は帰れないと言う電話がかかってくる。最後にオルゴールのことを伝え、電話は切られた。玄関には壊れたあのオルゴールが置かれていた。
 翌日。壊れたオルゴールを手に父の帰りを待つマキ。そこへ事故に会ったと頭に包帯を巻いた村田がずぶ濡れで帰ってきた。娘を寝かしつけるために寝室へ行く千津。隣の部屋から、娘のことをよろしく頼むと言い残し、村田は姿を消した。

死体置場の殺人者  大学での授業中、水上は村田の姿を見てしまう。その夜。涼子のマンションから帰ろうとする水上は車内で村田の声を聞く。死体を確認するためにモルグへと急ぐが、村田の死体は消えていた。驚く水上。とたん背後から村田に襲われるが、なんとかホルマリンプールに死体を戻し、脈の確認をする。たしかに村田は死んでいた。村田の蘇生を怖れた水上は、翌日、解剖実習として村田の死体から脳と心臓を取り除くのだった。
 医学部長の剣持から教授昇格を知らされた水上がその夜、弥生と友人の坂野(野坂昭如)の3人で祝杯をあげていると、涼子から村田が現れたとの電話がかかってきた。弥生の制止を振り切り涼子の元へ向かう水上だが、涼子のもとへ向かう途中、その涼子を誤ってはねてしまう。家に戻った水上に、涼子の死体も同じ方法で始末しておいたと、村田から電話がかかってきた。

 翌日。朝一番に大学へ出かけた水上はモルグのホルマリンプールの中に涼子を確認する。今度こそ自分の命が危ないと考えた水上は、死体を燃やすことにし、深夜のモルグに忍び込んだ。運搬中、警備員の足音に姿を隠す水上。警備員をやり過ごし、運搬用ベッドを見ると死体は消えていた。そして聞こえる村田の復讐の声。今夜は水上の息子の誕生日。まさにあの日の村田と同じ境遇であった。
 外へ逃げた水上を村田が待ち伏せしていた。水上は足元にあった石油を村田に浴びせ、火を放った。逃げるように車を走らせる水上。いつしか激しい雨が降っていた。フロントウィンドウの上部から延びてくる村田の手。その場に車を止め、運転席から逃げ出す水上。だが車が追ってきた。村田が運転しているのだ。そして水上は追いつめられた。

 翌日の大学。生徒たちが解剖する死体を運びにモルグへとやって来た。ホルマリンプールのフタを開けると、そこには水上の姿があった。村田の復讐は終わった。

 今回改めて見直して、なかなかの恐怖物であることを再確認しました。制作第3話という事もあり、作られたのは昭和44年中の事と思われます。当たり前で、「エクソシスト」や「サスペリア」と言ったホラー映画はまだ公開されていません。その描写から百数カットが手直しされたとの事ですが、手直し前はどんな映像だったのかが気になるところです。
隙間から覗く村田  殺された人間が復讐するという話ですが、それまでだったら「四谷怪談」などに代表される怪談話でしょう。しかし時代が違うため、どうしても時代劇ベースの怪談話は絵空事と思えてしまいます。ならば現代の怪奇でと考えると、「怪奇大作戦」の第13話「氷の死刑台」あたりが近いでしょうか。
 でも「氷の死刑台」とこの話では、怖さのレベルは確実にこっちですね。例えば水上家の子供部屋のアコーディオンカーテンのすき間から村田がこちらを見ていたカット。“全体像が見えないもの”が一瞬だけ見えるというのは、それが何なのかがなかなか理解できないため不安度は増し、それだけに怖さも倍増します。
 涼子の部屋へ現れた村田ですが、水上の元へ電話を掛けたのは、実は村田なんじゃないかと思ってみたりして。もちろん声色を使ってね。あの状況で水上に電話を掛けられるとは思えないし、涼子をおどして外へと逃げさせたところを、水上に殺させると。
 さて、友人の坂野こと野坂昭如。そのキャラ設定は、小説から歌まで大活躍のマルチタレントと、本人そのまんま。直接話には絡まない単なるちょいキャラだけど、バケモノに興味を持っていて、特に死体の蘇生などに関心があると、内容的には繋がりがあるのです。


  【第10話:サラリーマンの勲章】 1973年3月12日放送 制作第13話
●原作:樹下太郎「サラリーマンの勲章・消失計画」 脚本:上原正三 監督:満田かずほ


サラリーマンの勲章
 ごく普通のサラリーマン、犬飼市郎(梅津栄)、39歳。計算課長というポストに就任させられた彼は早朝会議に出席するため、それまでより30分早い出勤を命ぜられる。だが犬飼はこの日とうとう遅刻してしまう。『遅刻者は厳しくその理由を追及される』。犬飼は喫茶店の店員に仮病の電話をかけてもらうのだった。
 会社では重要会議をすっぽかされたと大騒ぎで、午後に再度会議を開く事になった。書類だけでもと犬飼の家にその旨電話をかけると、犬飼の妻・貞子(津島恵子)は、犬飼から急に出張になったとの連絡を受けていた。会社に呼び出された貞子は、犬飼が課長になる事を嫌がっていたと告げた。理由を問われ、「朝の30分寝坊が出来ないから」と話す。それに対して、出世はサラリーマンの勲章であり、それを嫌がる者などいるはずがないと会社役員一同(神田隆 他)は笑い飛ばした。

 犬飼が行き着いたのは課長昇進の2次会で行ったバーだった。バーのホステス、森宇多子(冨士真奈美)のアパートに転がり込んだ犬飼は、そのまま夜を過ごした。宇多子の亭主の勝男(向井精七)は2年前に蒸発してしまったのだという。
 翌日、犬飼はまたも会社へ仮病の電話を入れた。その夜、宇多子が店の客を連れてきたため、犬飼は外へ出て行く事になる。公園でシンナー遊びにふけるフーテンカップルを見つけた犬飼はシンナーを取り上げるが、自分だってやりたい事が出来た若い頃があったんだろうと文句を言われてしまう。犬飼の若い頃。それは戦争の時代であった。そんな時代に自由などない。そして戦争が終わり、サラリーマンとなった今も自分の自由はない。そしてやっと掴んだ自分の自由。犬飼は宇多子との結婚を決心する。
 翌朝、犬飼は宇多子に結婚を申し込む。だが宇多子から妻子の事を問われると、偽装自殺で犬飼一郎をこの世から抹殺し、森勝男に成り代わると答えた。宇多子は承諾した。犬飼にとって新しい人生が始まろうとしていた。だが、喫茶店から発見された犬飼の手帳から足取りをつかんだ会社の部下たちが部屋へ乗り込んできた。
 犬飼は家へ連れ戻された。妻の貞子は宇多子の事はなかった事にしてくれると言った。犬飼にとって窮屈な、前と同じ生活が始まろうとしていた。

 翌朝、いつもどおりに家を出た犬飼。だが犬飼は会社へは行かず海へと向かった。数時間後、宇多子の元を再び訪れる犬飼。犬飼は偽装自殺をしてきた事を告げるが、宇多子は犬飼の気持ちに添えられないと、部屋から出て行くように言う。あれだけ喜んでくれたのにと、宇多子の言っている意味が理解できない犬飼の前に1人の男が現れた。誰だと犬飼に詰め寄る男。犬飼は“森勝男”と答える。だが、この男こそが宇多子の亭主の森勝男であった。自分の女房に手を出された事に激怒した勝男は犬飼を締め上げる。それを止める宇多子。「また刑務所に逆戻りするわよ!」

社会的に死んだ男・犬飼市郎  犬飼は偽装自殺の際に、家と会社宛に遺書を送っていた。もはや犬飼は社会的に死んでいるのだ。犬飼の会社では、大阪支社より来た上村(南廣)が犬飼の後釜へと収まった。部下の柏(鶴賀二郎)や八木(二瓶正也)らは、上村の笑顔を見てを、やはり人間には勲章が必要だと悟る。だがその勲章とは必ずしも出世ではなく、自分にとって満足している瞬間が、勲章を付けた晴れ姿なのだと知る。
 犬飼の家では、貞子とその妹の洋子(横山リエ)が犬飼の写真を見ている。洋子は姉夫婦を見て、人間の平和が怖いと言った。「人間の平和なんか、すぐアンバランスに壊れちゃうものね」と言い切った。
 犬飼はどこかで生きているのではないかと考える貞子。サラリーマンの勲章を捨てて、納得のいく生き方をし、本当の勲章を飾ろうとしているのではないかと。

 大都会の、とある喫茶店の片隅。会社を捨て、家庭を捨て、そして自分を捨てた男がそこにいた。

 評価が低いようだが、他の話(特にこれに前後する9話、11話及び12話など)と同じ、怪奇的な意味での恐怖ドラマとして考えると、この作品の恐怖はわからないと思う。社会的恐怖というか。うまく説明は出来ないが、もう少し評価されても良い作品ではないかと。
 縛られた鎖からの脱出。本当の自由、本当の自分。サラリーマンに限った事ではなく、人間なら誰もが一度は思う事ではないだろうか、“世の中からいなくなりたい”と。でも死んでしまってはそれでおしまい。生きながら、この世から消える。
 前作「死体置場の殺人者」とは打って変わって、社会派ドラマって言うんですかね。ホラーなどの恐怖話ではなく、自分を消す事に失敗した男の哀れさを描いた話ですか。制作最後の話はこんな感じで締めくくられました。民謡の秋田音頭はドリフで覚えているため、どうしても「のってる音頭」になってしまう(笑)。
 バランス良く保たれていた日常。そこへ突然降りかかる出来事、望んでいるわけでもないのに押しつけられる出世。そして崩れる自分のまわりの日常。この課長就任がなければ、犬飼も宇多子と知り合う事はなく、それ以前に今までどおり平々凡々と暮らして行けたであろうに。なんか哀しいものがありますね。この男はこの後どうするんでしょうか。新たな勲章を見つける事が出来るんでしょうか。
 円谷特撮では脇役・チョイ役の印象が強い梅津栄が、主役・犬飼市郎役を好演しています。その他の出演者として源田隊員の二瓶正也、水棲人サイボーグ1号の鶴賀二郎、そしてサウスこと副長・南廣などなど。MJでまとめてみました。


  【第11話:吸血鬼の絶叫】 1973年3月19日放送 制作第2話
●脚本:若月文三 監督:鈴木英夫


吸血鬼の絶叫
 霧の東京、真夜中。とある地下室に横たわる男。その胸には杭が打ち付けられていた。そこへマント姿の男(ジョー・デコーネング)が現れる。自らを『トランシルバニアから来た』というマントの男。その口からは牙が覗いていた。そしてマントの男は、横たわる鬼崎進(富田浩太郎)の胸から杭を引き抜いた。鬼崎は甦った。
 トンネルの中を歩く鬼崎と、その後ろを歩く東田久美子(長岡初恵)。鬼崎は曲がり角に身を潜め、久美子が通り過ぎた後ろから襲いかかり、久美子の首筋に牙を落とすのだった。

 翌日、久美子の兄・東田一平(勝呂誉)は警察で妹の遺体と面会した。警察側は変質者の仕業で、体内に血がない事から失血死ではないかと考えた。腑に落ちない東田は、妹は吸血鬼に襲われたのではないかと考える。そんな事はあり得ないという鬼村玲子(弓恵子)だが、その玲子の父こそが、日本にも吸血鬼がいるという事を言った張本人なのだ。それが元で大学教授を追われてしまった玲子の父・鬼村博士。その鬼村博士もまた、4年前に失血死で死んでいた。
 別の晩。またも鬼崎の牙の犠牲になる女が1人。血を吸い終えた鬼崎はあの地下室に戻り、眠りについた。

 玲子の勤めるクラブ楓。危険だからと吸血鬼調査を止めるように言うが、東田はそれを聞かずに店を出て行ってしまう。閉店時間となり店内装飾のロウソクの炎を消す玲子。そこへやって来た鬼崎は玲子に襲いかかろうとするが、ロウソクの炎を見た鬼崎は悲鳴を上げながら逃げていった。
 自宅に戻った玲子は、父親の講義用ノートを手に東田の部屋を訪ねた。ノートの余白には吸血鬼事件に関する事が書かれていた。その時、鬼崎も玲子を追って東田の部屋の前に来ていた。しかし時計の鐘が午前5時を打ち、空は明るくなってきていた。鬼崎はあわてて逃げていった。

襲われる東田  玲子の父、鬼村博士は偶然吸血鬼がいる事を知ってしまい、そして吸血鬼に殺されたのだと考える東田。吸血鬼は墓から死体を掘りおこし仲間を増やすのだという。東田は静岡にある鬼村博士の墓へ行ってみようと玲子に言うが、断られてしまう。
 真夜中0時の鐘が鳴り響く深夜の東京。今夜も目を覚ます鬼崎。玲子がいなくなったという報せを受けて、クラブ楓へ行こうと車に乗り込む東田。その時後部座席に隠れていた鬼崎が襲いかかってきた。あわててクラクションを鳴らすと、その音に驚いて鬼崎は逃げていった。
 クラブ楓。ホステスから、玲子がスーツケースごと姿を消した事を聞かされる東田。少しして外は激しい雷雨となり、店内は停電になった。ロウソクに炎をともすと、扉の方から悲鳴が聞こえた。鬼崎が来ていたのだが、東田たちはそれを気のせいと思った。店内に電気が戻るが、また停電するといけないからと1本だけロウソクをそのままにしておいたため、鬼崎は逃げていった。
 翌朝、玲子が店に戻ってきた。玲子は静岡へ行っていたのだ。吸血鬼の事は忘れた方がいいと、東田に再度通告する玲子。博士の死体は墓に葬られていたという事か。

 翌晩。三度クラブ楓に現れる鬼崎。鍵を壊し店内に侵入する鬼崎。店の奥へと進み、自宅となっている玲子の寝室の鍵を壊し部屋に入る鬼崎。そこへやって来る東田。襲われている玲子に銅の十字架を持たせると、鬼崎は逃げていった。玲子を自分の家へ避難させようとするが、玲子は店内に隠れていた鬼崎に捕まってしまう。ロウソクの炎を手に店内を探すと、その炎を怖れて鬼崎は店の奥へと逃げていった。だが奥にある寝室には銅の十字架。苦しむ鬼崎。
吸血鬼の最期  ロウソクの炎が弱点とわかった東田たちは、店内のロウソクに炎をともし防御壁を作った。玲子が警察へ電話をかけようとした時、鬼崎の杭を抜いたマントの男が現れた。トランシルバニアから来た吸血鬼である。吸血鬼はロウソクの炎をマントの風で消し、店内を暗闇にした。その隙に鬼崎は玲子をさらい、吸血鬼共々地下室へ帰っていった。
 朝となり、吸血鬼たちを追った東田は、ある建物の敷地内に落ちている玲子の靴を見つける。さらに東田は地下室への入り口に気付き、地下室で眠らされている玲子を発見。東田が傍らに眠る鬼崎の胸に杭を打ち付けると、玲子が目を覚ました。玲子は、絶命する鬼崎の横に眠る父親を見つける。玲子は事が恐ろしくて、東田に本当の事が言えなかったのだと言う。さらに東田が吸血鬼に杭を打ち付けると、地下室が崩れ始めた。その場を逃げる東田と玲子であった。

 初期に制作された話という事で、純粋に“恐怖もの”という作りになっています。
 しかし吸血鬼話(しかも日本に於ける)という事で、前々話「死体置場の殺人者」よりも絵空事的に思えてしまうのはしかたない事でしょうか。
 玲子の寝室から店内に逃げた鬼崎。自分の家へ避難しようと店内を確認する東田。鬼崎がいない事を確認し、玲子を店内へと呼ぶシーン。扉の影にいるのでは?と思わせる作りは、ありきたりと言えばありきたりだけど、見ていてハラハラします。
 さて。日本の吸血鬼俳優と言えば、やはり岸田森を思い浮かべてしまう。もしこの話で岸田森が吸血鬼を演じていたらと想像してみたが、岸田吸血鬼は、どちらかというとインテリチックというか、知的なイメージがあって、この話での鬼崎役にはやっぱりそぐわない感じに思える。
 それでも考えてみると、鬼崎のあの風貌を見るとどう考えても正常者には見えない。となると近いのは、「狂鬼人間」で発狂した姿か?「狂鬼〜」でも牧と三沢の絡みはないので、ちょっと面白いかもしれない。
 その怪奇大作戦の次に制作されたと言う事もあって、東田一平役の勝呂誉が三沢京介そのまんまの風貌だ。(途中「先輩」というセリフもあるのでよけいに三沢をイメージしてしまう)
 それにしても、怪奇大作戦を含めて「鬼」という字の付くネーミングが目立ちますね。「鬼崎(きざき)」だの「鬼村(きむら)」だのと。「怪奇大作戦」では「青い血の女」の「鬼島(きじま)」、人名じゃないけど「霧の童話」の「鬼野村(おにのむら)」とか。


  【第12話:墓場から呪いの手】 1973年3月26日放送 制作第1話
●脚本:若月文三 監督:鈴木英夫


墓場から呪いの手
 とあるマンション、桑田哲也(山本耕一)の部屋。目を見開き床の上に横たわる月村久美(牧紀子)の死体。桑田は久美を浴室に運び、用意しておいた包丁でその身体を切断し始めた。久美の赤い血がシャワーの水に流され、排水溝へ流されてゆく。バラバラにした久美を油紙にくるみ、川へ、そして山中へと捨てる山本。
 無人と化した部屋に響く、シャワーからこぼれる水滴の音。その光なき浴室で、何かが動いていた。

 部屋に戻った山本。すると浴室の扉が開くが、中には誰もいない。山本は気を落ち着かせようと酒を飲んだ。いつしか眠りにつき、目覚めると朝になっていた。山本はバーのホステス、レイコ(藤あきみ)にアリバイ作りをさせる。“昨夜は2人で酒を飲んでいた”と。そしてそのため、その晩もレイコと自宅で酒を飲む事にした。いつしか外には霧が出ていた。
 列車の操車場。砂利の中から何かを掘りおこす音が響き渡る。何者かが“久美”を掘りおこしていた。保線夫がその犯人に気付いたとたん、そいつは保線夫めがけて襲いかかってきた。

 山本の部屋。深夜に突然鳴る部屋のブザー。ドアを開け、廊下に出るが誰もいない。部屋に戻ると窓が開いていた。締めようとするとまたもブザーが。レイコは久美ではないかと言うが、それに怒る山本。レイコがドアを開けるが、またも無人。そのままレイコは帰っていった。
 眠りにつく山本だが、ブザーの音で目を覚ました。またイタズラかと扉へ向かうと、その足元には“久美”をくるんだあの包みが。あわてて冷蔵庫へ隠し、ドアを開けるとそこにいたのは管理人(和久井節緒)と警官だった。山本の部屋から110番通報があったというのだが、山本には憶えがない。言い訳をしていると、あの冷蔵庫から水が漏れたり、突如として浴室のシャワーから水が出たりという怪現象が。怪しむ警官にまたも苦しい言い訳をする山本。警官が帰った後浴室を見ると、浴槽には油紙にくるまれた“久美”が浮いていた。後ずさりしながら浴室を出る山本。と突然電話が鳴った。無言電話だった。

 [山本の回想] 山本は会社の帳簿に大きな穴を開けてしまい、それに気付いたのが久美だった。その事を知った山本は久美に近づいた。だが山本に女が出来た。さらに久美による帳簿の処理が終わると、久美はジャマな存在となった。山本は久美に別れ話を持ち出したが、久美はそれを拒んだ。久美はすべてを話し辞表を出すと言った。部屋を出て行こうとする久美に後ろから襲いかかる山本。そして―
 久美にはのり子(松本留美)という妹がいた。山本は、今までの事は、久美から話を聞いたのり子の仕業ではないかと考えた。だがのり子も山本に、最近姿を見ない姉の事を聞こうと考えていたという。

 深夜の河原であそぶカップルは、謎の包みを発見する。そこから出てきたのは“手”だった。車に逃げ込むカップルだが、男(渚健二)が“手”に絞殺される。警察に逃げ込んだ女の証言から、車中から久美の指紋が発見される。事情聴取に呼ばれるのり子。
 のり子と別れ自宅へ戻った桑田は、不自然に開いている窓に気付く。だが部屋には誰もいない。そこへのり子が中川刑事(入川保則)と共に訪ねて来た。久美に殺人の容疑がかかっている事を聞き、久美はそんな事をするような女ではないと、あわてる桑田。そんな桑田の素振りに怪しさを感じるのり子と中川。

忍び寄る久美の手  眠っている桑田めがけて手が忍び寄ってきた。首を絞められ、目を覚ます桑田。手を窓の外へ捨て、部屋に残った包みを再び河へ投げ捨てる桑田。友人の杉本医師から、人間が死んでも部品はそれだけでもしばらくは生きていると言う事を教えられ、桑田はあの“手”が“久美の手”である事を確信する。
 帰り道、のり子はすべてを知っていると考えた桑田は、のり子をマンションに呼び出すことにした。部屋に戻った桑田はそこで信じられない光景を目にする。捨てたはずの“久美たち”が桑田の部屋に戻っていたのだ。それに恐れをなした桑田は部屋を飛び出るが、のり子に“久美”を見られてはマズイと、マンションに戻った。
 マンションに着いたのり子は、茂みでうごめく手を見てしまう。そこへ戻ってきた桑田。桑田に手の事を話すのり子だが、久美から話を聞いているものと思いこみ、のり子を殺そうとする。だが間一髪を“久美”が救った。“久美”に恐怖した桑田は非常階段に逃げていった。だがそれを追う“久美”。手は桑田の首を絞め、そして桑田は階下へと転落した。息絶えた桑田からはずれる“久美”。久美の復讐は終わった。

 制作第1話で、「死体置場の殺人者」同様、かなりの恐怖ものに仕上がっています。お話自体は殺された女による復讐ものと、恐怖ものとしてはありふれたジャンルだけども、手だけが襲って来るという設定が怖さを倍増させています。
 にしても、「手」による連続殺人はちょっと腑に落ちない。何が目的なのか?カップルの男殺しのような展開(警察にわからせ、桑田に行きつかせる)が目的とも考えられるが、ただ単に“姿を見られたから消す"という、ショッカー怪人的思考なのかもしれない。
 手の話というと、怪奇大作戦第17話「幻の死神」で、密輸団の使ったトリックがあるけども、実際に自分めがけて襲ってくるという事で、恐怖度としてはこちらの方が上でしょうか。しかも手の動きが、昨今の怪談話に出てくるものと近い感じで…。
 さて今回の主役(?)とも言える“手”ですが、これはスタッフが見つけてきたおもちゃですが、映像としては時折本物の(スタッフの)手が挿入されるため、よりいっそう本物度がアップしています。
 モノによっては「墓場からの呪いの手」なんて書かれてたりしますが、サブタイ写真を見てお判りの通り、「墓場から呪いの手」であります。




  【第13話:蜘蛛の女】 1973年4月2日放送 制作第4話
●脚本:滝沢真理 監督:井田深


蜘蛛の女
 無数の蜘蛛をペットとして飼う女・加原連子(八代万智子)は、悪徳高利貸しとして負債者たちから女郎蜘蛛と呼ばれていた。写真家として成功したいと考える森辰也(佐々木功 )は、連子のご機嫌取りをして、個展を開くための金を用立ててもらっていた。だが連子はそれを許さなかったので、辰也はウソを言って金をせびっていた。
 この日も小切手を用立ててもらうが、因縁を付けてきた山西(今井健二)に小切手を巻き上げられてしまう。しかしその夜、辰也は山西が連子の手下だというカラクリを見破り、連子に文句を言うが、逆に「ヒモに権利はない」と罵られてしまう。まさに男を金という糸で縛り付ける女郎蜘蛛。
 「ボクを蜘蛛のように飼うつもりだね」
 「辰也はペットなのよ」
 カッとなった辰也は連子の首を絞めて殺してしまう。気を落ち着かせ連子の死体を見ると、連子の死を悲しむが如く、無数の蜘蛛が連子の躰にまとわりついていた。辰也は連子の死体を山中に運んで燃やすのだった。
 部屋に戻った辰也は、ベッドの下から大金を発見し狂喜した。ふと見ると、いつしか部屋中に蜘蛛の巣が張られていた。それを払い落とす辰也。

 翌日、個展の準備に取りかかった辰也だが、部屋に連子の妹の松美(集三枝子)と名乗る女がやって来た。とりあえず部屋にいてもらう事にしたが、松美も連子と同じく蜘蛛を愛でる女だった。
 その夜、ソファーで眠る辰也は連子を燃やした夢にうなされ目を覚ました。洗面所で水を飲む辰也の目の前の鏡に映る連子。だが振り向いた先にいたのは松美であった。先に寝室に戻る辰也。1人になった松美はこうつぶやいた。
 「私が連子だとは、まだ気がつかない」
 だが、鏡に自分の本当の姿が映ってしまう事を知った松美は、洗面所の鏡を割ってしまう。

 松美と蜘蛛を気味悪がった辰也は新しいマンションを探すが、不動産屋から出たところを山西に見つかり絡まれてしまう。辰也は山西に松美の事を話すが、山西は連子に妹などいないと言った。
 一方、個展会場では、翌日の個展開催のために準備が進んでいた。飾られる数々のパネル。モデルとなった恋人のミチ(真里アンヌ)も嬉しそうなそぶりであった。
 夜。連子殺しをネタに金を巻き上げようと山西がマンションに来るが、山西は逆に辰也に殺されてしまう。連子のような口ぶりで、一部始終を見ていたと言う松美をも殺してしまう辰也。2人の死体に鎖を巻いて海に投げ捨てるのだった。

狼狽する辰也  翌日。個展は開かれたが、そこに飾られた写真は、辰也によって燃やされる連子や、鎖を巻かれた松美たちの不気味な写真へと変わっていた。
 その夜、再びあの山中へと赴く辰也。連子の死体を埋めた場所を掘り返すが、連子の死体は出てこなかった。さらに翌日。海中から山西の死体だけが発見された事を不思議がる辰也。そのとたん天井から降りてくる一匹の蜘蛛。見ると、またも部屋中に蜘蛛が巣を張っていた。辰也は、松美=連子であり、そして、蜘蛛であると考えた。

 辰也は、恋人のミチに頼んで一緒に部屋を出る事にした。だが、1人先にマンションに向かったミチは、そこにいた蜘蛛=連子によって殺されてしまう。遅れて部屋に戻った辰也はミチの死体を見、そして目の前に現れた連子から逃げようとして家具の下敷きとなってしまう。身動きがとれなくなった辰也めがけて無数の蜘蛛が襲ってきた。連子は不気味な笑みを浮かべ乍辰也の最期を見届け、消えていった。

 殺された女の復讐劇という点では、前作「墓場から呪いの手」と類似するが、あちらが殺された女が手だけとなり襲ってくるのに対し、かわいがられていた別の生き物が、主人の復讐の手助けをする話になっている。怪談話の化け猫の話とか、そんな系統でしょうか。それでも連子側からすれば、「蜘蛛の恩返し」的な話になるのか。
 蜘蛛を助ける話と言えば、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」がある。地獄へ落ちた極悪人・カンダタが、たった一度、蜘蛛を助けた事からお釈迦様に地獄から逃げるチャンスを与えられるというあの話だ。
 悪徳高利貸しとして様々な恨みを買っていたであろう連子だから、おとなしく極楽浄土というわけにはいくまい(しかも辰也への怨みから死にきれてないし)。蜘蛛を愛でていた事から、地獄へ落ちてもカンダタのように、と思うが、連子の場合は、(いくら辰也に殺されたからと言って)蜘蛛を使って復讐という事をやったため、やっぱり蜘蛛を愛でた事は帳消しになるんでしょうね。
蜘蛛  近年の行き過ぎとも思えるペットブームで、ヘビやトカゲなどのハ虫類や、連子のように蜘蛛を飼ったりする人もいるみたいだけど、この話のように、主人の復讐に手を貸してくれるペットはいるんかな?
 物語のラスト、ガランとした部屋を訪れる足音と扉をノックする音。それに応えるかのように入るナレーション。「入ってはいけません。この部屋は改装しても、改装しても、蜘蛛が出るので、借り手のないまま放ってあるのです。もしあなたの部屋にも蜘蛛が出たら、ご用心下さい。そして、あなたのそばにいる女性にも、ご用心、ご用心…」。BGMは連子の吹く不気味な口笛。そして広々とした、一見きれいな部屋に降りてくる一匹の蜘蛛─。
 それにしてもこのシリーズ、13本中4本(約3分の1)のタイトルに「女」が絡んでいる。土曜ワイドの明智小五郎シリーズを彷彿させるが、それだけ女の執念は恐ろしいという事なんでしょうか。
 解説文には書いてないけど、個展を開くギャラリーの支配人役として大泉滉が出演。辰也の忘れ物を届けに来るシーンで、とぼけた演技を見せてくれています。




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